私がこれまでの経験上融資を受ける際に「銀行融資がおりない会社」の共通点を7つ紹介します。
債務超過、連続赤字や税金滞納があると融資はおりませんが、会計面での審査基準ではなく、基本面の「社長の経営者としての姿勢や人間性」の部分を挙げます。
自分の会社やご自身の態度に思い当たる節はないか、振り返りながら読んでいただけると幸いです。
- ① 資料提出が遅い、不足
- ② 融資の目的、金額があいまい(借りれるだけ借りたい)
- ③ 社長が会社の決算書や試算表の中身を説明できない
- ④ 経理担当者が経理にくわしくない
- ⑤ 会社の長期的目標や方向性が明確でない
- ⑥ 社長が高齢、後継者が定まっていない
- ⑦ 社内全体が乱雑で、従業員があいさつしない
順に説明していきます。
① 資料提出が遅い、不足② 融資の目的、金額があいまい
共通して言えることは、融資を申し込む準備ができていない無計画であるということです。
ただ資金不足で融資を受けたいだけで、その目的も明確な金額も決まっていないのです。
「300万円くらいあると助かる」「借りれるだけ借りたい」「いくら借りれますか?」といった、何となく融資を求めるパターンです。
資料がすぐに提出できないのも、経理業務が疎かだからです。
- 帳簿付けを毎日、毎月行う
- 社長が日頃から経理に関わる
- 領収書はまとめて会計事務所に送らずこまめに送る
- 試算表、売上の推移、資金繰表を作っておく
③ 社長が会社の決算書や試算表の中身を説明できない
会社がずさんな会計になっている原因は社長自身の会計への不勉強にあります。
会社のお金のことを正確に把握しようという気がないため、経理が適当な決算書や試算表を上げてきても気にしません。
気にしないというより、そこに書かれている数字の意味がわからないので気にしようがないのです。
貸借対照表が何のためにある書類なのかを理解していない社長もいます。そういう状態では、決算書や試算表の説明などできません。
④ 経理担当者が経理にくわしくない
経理担当者がいる場合、帳簿作成も「自計化」ができていて、月々の試算表もリアルタイムに社長に提出されていることと思います。
自計化というのは、自社でソフトを使って社内で会計処理を行うことをいいます。ですが、会社によっては、「経理」ではなく「事務担当者」を置いている場合があります。
事務担当者は電話応対や接客といった事務本来の仕事をしながら、売上に関わる請求書の作成発送、送られてきた請求書の整理と支払い作業、給与計算などの会計的な仕事をしています。
そして、請求書や領収書などを整理して会計事務所に渡すところまでが、その役割です。
帳簿付けのための材料を揃えるところまで終わっていて、帳簿付けそのものは外部に任せているケースが多いです。
社長は経理担当と「今、会社がどういう業績なのか」を数字で客観的に把握していかなくてはなりませんが、
経理担当が経理を把握していないので、それができません。社長も経理にそれを求めていないという問題があります。
⑤ 会社としての中長期的目標や方向性が明確でない
経営戦略のない会社は行き当たりばったりの対応になりやすく、会計がどんぶり勘定になりがちです。
すると、業績に波が生じて安定的な経営ができません。
そういう会社では、業績が悪くなってくると、「目の前のお金を集めることだけに必死」になりがちです。
社長が自分のお金さえも会社の補填に充て、銀行からも目いっぱい借りて、何とか運転資金を調達します。
そして、今度は「借金を返すために、また借金をする」悪循環にはまってしまい、最終的には払えなくなってしまいます。
目先のお金、目先の事業しか見ていない会社にお金を貸すと、自分のところにお金が返ってこないことを、銀行はよく知っています。
そういう会社は融資先の候補から外されてしまいます。
経営戦略がない会社の特徴として、「設備投資に計画性がない」というのがあります。今期は黒字が大きくて税金が高くなるということを想定して、経費を増やすために設備を買ったり、急に仕入れを増やしたりします。思いつきで設備を買うわけですから、「本当に必要なもの」ではなく、「そのときにほしいもの」を買ってしまいがちです。
従業員の座っている椅子がボロボロになっていても、新しいものに買い替えないで、社長が社用車(という名目の自家用車)を新車で買ってしまったりするのです。
銀行は取引先の会社をときどき訪問します、あれは社長と世間話をしに来ているだけでなく会社の設備や従業員たちの働きぶり、表情などを見て、会社の健全度を測っているのです。
従業員たちがボロボロの椅子で仕事をさせられているのに、社長だけが良い車に乗っているのを見たら、銀行員は「この会社は正しくお金が使われていない」と判断するでしょう。
⑥ 社長が高齢、後継者が定まっていない
後継者不在はどこの会社でも問題です。銀行もまた、これは死活問題です。社長に万が一のことがあったとき会社が継続して融資返済をすることができるか、不安に思っています。
ある会社では、現社長が長男に会社を継がせようとしていたのですが、それを聞いた銀行がダメ出したという例がありました。
「長男では先行きが心配なので融資はできません。しっかりした次男が継ぐという条件ならOKです」というので、社長が渋々、次男を後継者にしました。ちなみに、長男と次男との関係が悪化したことは言うまでもありません。
後継者がいるのに、いつまでも社長の座を譲らない場合も要注意です。「自分がいないと」と心配になり、譲れなくなる気持ちもわかりますが、自身は会長職に納まって、次世代に席を譲ってほしいと思います。
銀行は経営者の若返りを喜びます。会社が心配ならば、後継者に譲ったうえで、新米社長をしっかりサポートしましょう。
かといって、飾り物の後継者を据えることはお勧めしません。銀行はすぐにその状況を見破ります。
⑦ 社内全体が乱雑で、従業員があいさつしない
社内の整理整頓はとても大切です。仕事上、物が多く置いてあることはいいのですが、それらがあまりに煩雑に置かれていたり、汚れていたりする状況は、銀行のマイナス評価につながります。
従業員の態度もそうです。あいさつしても、あいさつが返ってこないとか、社内全体が暗い印象を受けるような場合には、その評価はやはり下がります。
なぜなら、従業員に活気のない会社に良い仕事ができるのかというと疑問だからです。
従業員が幸せでない会社は、従業員が辞めていったり、仕事へのモチベーションが低かったりで、結局は業績に反映します。
知られたくないことや都合の悪いことは隠しておきたいものですが、ほぼ筒抜けになっていると思ってください。
自社を見て「整理整頓ができていない」「従業員たちのあいさつができてない」と思ったら、銀行側から「要注意」の評価を受けているかもしれません。
