不動産業の事業再生のポイント

事業再生

1.不動産業の特徴

不動産業は市況に影響されやすい業種です。

不動産価格が値上がり傾向の場合には大きく利益が出ますが、逆に値下がりが発生すると、非常に苦しい状況に陥ります。

なぜなら、不動産の取得に当たって借入金で資金調達をしていることから、その借入金が弁済できなくなるからです。

2.不動産の分類

まず、不動産を賃貸用と転売用不動産とに分けて考えます。

それぞれ、1、3、5年の資金計画を確認します。

損益計画も重要ですが、一般的には損益がプラスになっていれば資金もそれなりに回っていくものの、不動産業ですと動く資金が大きいため損益計画やキャッシュフローの計画とは別に、資金計画を作るべきです。

賃貸用不動産では毎月の賃料と費用は必要となりますが、賃料については、ある程度値下げや空室リスクがあることを盛り込んでおくことが必要です。

日常的な修繕や必要な大規模修繕も織り込む必要があります。

どうしても成立しない場合には、処分する前提での金額を出すことになります。

転売用不動産については、売却を前提としてるので売却価格が問題となってきますが、鑑定評価書を取れれば望ましいものの非常に高額となりますので、

不動産鑑定評価基準によらない評価書を取得したり、近隣相場や路線価、固定資産税評価額などから算定することも考えられます。

3.基本的な再生方法

不動産の価格が下落してる場合は不動産の価値を上げる必要があります

基本的にはリノベーションを行うことが方策の一つとなります。

中古の住宅市場は堅調な場合が多く、きちんとしたリノベーションを行えば十分な収益を得られる可能性はあります。

リノベーションを行っても価値が上がらない不動産も存在しますし、また、そもそも資金が無いからリノベーションを行えないので困っているという場合が多いでしょう。

価値があがらない不動産については、損切りして処分するほかありません。

また、資金については、基本はやはり借入金となりますが、決算内容の悪い会社であれば、金融機関としても貸したくても貸せないということになってしまいます。

ある程度採算が見込まれる不動産があるのであれば、その不動産を別会社に移し、財務上問題の無い会社として資金を調達することが考えられます。

(第二会社方式、M&A)

不採算部分は元の会社に残して特別清算等を行うことになりますので、従来からの借入金については一部弁済が不可能になります。

もちろん、金融機関は簡単には納得してくれませんが、返済計画書、事業計画書等を作成し、その方が金融機関に対する弁済額が増えることを説明する必要があります。

※金融機関から見て、すぐに清算するよりも、多く回収できる見込みがある。

不採算不動産 部分

・不動産は処分 任意売却、競売

・金融機関は 一部回収

・残債は分割

優良不動産 部分

・不動産は リノベーションなどで価値上昇

・金融機関から新規借入

4.注意事項

上記3で述べたとおり、別会社を使うというのは一つの手段ですが、次のようなことも考えられます。

・一時的な資金不足の回避のため、買戻特約付や再売買予約で投資家に売却する。

5.敷金の問題

不動産業の特徴の一つとして敷金があります。

再生会社においては負債となります。

賃貸用物件のテナントまで巻き込むと、再生計画としても非常に複雑になります。

オーナーである不動産会社が保有している場合には解決できますが、場合によっては不動産の管理会社が保有していることもあります。

その管理会社の倒産等となると、その敷金について法律的に若干難しい部分が出てきますが、柔軟かつに対応する必要があるでしょう。

6.指標

金融機関との交渉が必要ない状態でも、借入金を適正な水準に保つことは重要な事項です。

不動産関連については、たくさんな指標がありますが、一つの目安として次の指標が考えられます。

借入金月商倍率=長期借入金÷月商

多くて6ヶ月程度

ただ、不動産業といっても様々ですし、また、不動産については様々な指標があるので、採用する指標や適正な水準は専門家等と相談してください。

7.最後に

不動産業は、売買した場合に一つの損益が大きく、損益や資金の管理が大雑把になりがち(考えても仕方がないと思ってしまう)なことが多いように思われます。

上記のとおり本来は損益と資金の双方を管理し、それぞれの中長期計画を立てる必要があります。

特に再生場面では回収予測が重要になるので、

事業再生の専門家や会計事務所とよく相談して管理体制を整えていくことが重要です。

お問合せ
0120-777-123
https://arc-ma.jp/

アーク司法書士法人 代表社員 李永鍋

お問い合わせフォームはこちら