(1) 衡平性
民事再生や会社更生のような法的整理では、債権者については平等に取り扱わなければならないとされております(民事再生法155条1項本文、会社更生法168条1項本文参照)。
実体法上同じ性質の権利について不平等な扱いをすることは、債権者の合理的な期待に反するからです。
しかし、民事再生も会社更生も、実体法上は同じ性質の権利であっても、 権利の発生原因などの個別・具体的事情を考慮して、取扱いに差を設けることが 衡平に合致するときには、合理的な範囲で差を設けることを許容しています。
要するに、債権者間の平等を原則としつつ、合理的な範囲で差を設けることを許す衡平性を求めています。
衡平性の考えは、私的整理にも当てはまると考えられており、私的整理で 手続を進めるにあたっても原則として債権者を平等に取り扱い、差を設けるとしても合理的な範囲で区別するようにしてます。
(2) 透明性
法的整理では、情報を債権者に開示し、債権者集会で再生計画案につ いて多数の債権者の賛成を得られれば可決されます。 法的整理では債権者に対して十分な情報を開示して理解を得ることが求められており。 手続の透明性が図られています。
私的整理は、法的整理と異なり、原則として、多数決原理が働かず、対象となる債権者全員と合意できなければ成立しません。
債権者は、再生会社の事業再生や債務整理の内容について十分な説明を受けて十分理解しなければ、私的整理での再建計画や弁済計画に合意してくれません。
したがって、私的整理では、法的整理以上に債権者に対して十分説明し、理解してもらう必要があり、手続の透明性が求められているので資料などを提示します。
(3) 経済的合理性
私的整理の事業再生では、債権者にとって、経済的合理性のある弁済計画にする必要があります。
再生型の法的整理でも、破産をしたときの配当額よりも多くの弁済を債権者 にしなければならないという清算価値保障の原則(民事再生法174条2項4号)があります。
私的整理で求められる「経済的合理性」とは、法的整理でいうところの清算価値保障原則に相当するものです。
破産をしたときの配当額よりも多くの弁済を債権者にしなければ、 債権者としては私的整理に同意するメリットはありません。
私的整理での弁済計画では、破産をしたときの配当額よりも多くの弁済を債権者にすることが前提です。
