事業再生の主な手法は、
1 リスケ(元本返済ゼロ)と経費削減等
経営改善により利益を出し、リスケ期間中に資金を蓄えた後、返済を正常化させる、というものです。2 リスケ以外の方法として、「第二会社による事業再生」について解説します。
第二会社(別会社)による事業再生について
第二会社方式とは、今ある会社(旧会社)とは別の会社(新会社)を設立し、新会社に得意先・仕入先等の取引先・従業員・優良事業を移し、借金や不採算事業だけを旧会社に残し、旧会社を破産、特別清算等させる、といった手法になります。
新会社にて借入返済負担をなくし、再出発を図ろうというものです。
「そんなこと可能なのか?」
「訴えられたりしないのか?(詐害行為)」
正しい手順で行えば、詐害行為として訴えられることもなく、正常に事業運営を再出発することができます。
国の機関である「中小企業再生支援協議会(2022年3月4日に中小企業活性化協議会に再編)」でも採用されている手法です。
第二会社方式を進める際の手順・注意点は以下の通り。
1.資産・負債を正しく評価し、適正金額で新会社が買い取る
不動産や車両などの固定資産等を相場より低い価格で新会社に譲渡すると、当然ながら詐害行為として提訴される可能性がありますので、市場価格・時価に基づいて譲渡をする必要があります。
在庫(棚卸資産)は簿価で旧会社から買い取ります。
得意先の売掛金や仕入先の買掛金も簿価で移す必要があります。
得意先・仕入先の取引自体を新会社に移すことに対する対価は不要です。
※(譲渡対価として旧会社に移動した資金は、清算時に金融機関をはじめとする債権者への分配資金になります。
この資金を隠すような行為は厳禁です。
債権者の立場になって考え、債権者の利益を害しないように最大限の配慮を払う意識を持つことが重要です。)
買取資金がない場合は、第三者(スポンサー)から資金調達を行ったり、リースバック(売却後、賃貸する)会社などを利用することになります。
事業を移す方法として、「事業譲渡型」と「会社分割型」があります。法的、簿外債務リスクの低い「事業譲渡型」をおすすめます。
2.旧会社の代表者は新会社の代表者・取締役・株主にはならない方が安全。
旧会社と新会社が実質同一(法人格否認)とみなされるリスクを避けるため、旧会社の代表者は新会社の代表者・取締役・株主になることは避けたほうが良いです。
建設業の許認可取得で役員にしないといけない場合などはスポンサー方式で出資してもらいます。
新会社の代表者には、代表者の親族や従業員になってもらうのが一般的です。
旧会社の代表者が新会社の従業員や顧問になり、新会社をサポートすることは可能です。過大な給料や報酬を支給することは避けたほうが良いです。
3.旧会社の借入に代表者保証を行っている場合は代表者の自己破産も原則として検討する。
新会社に事業移した後に、旧会社は破産させることが一般的な選択肢となります。代表者が会社借入の連帯保証人になっていることが多いかと思います。
法人破産すれば、その借入は代表者が返済する必要があり、その返済が難しい場合は代表者自身の自己破産も原則として検討する必用はあります。
そのため、代表者として個人資産を残すことが難しくなります。(代表者の個人資産を事前に配偶者や親族に贈与するような行為も詐害行為になります。)
「自分が犠牲になり、取引先・従業員を守る」という覚悟がないと、この決断はできないでしょう。
(なお、住宅ローンの残っている代表者の自宅不動産を守れる場合もあります。リースバックなど)
※アークグループでは法人も代表者個人も破産しない方法の提案もあります。
代位弁済、債権譲渡後の低額和解など
この場合代表者と私は金融機関に何度も訪問する必要があります。
全財産や収入を公開し必要書類を提出することで公正を担保する必要があります。
金融機関の担当者に何度も質問され、ストレスになる経営者もいます。それでも破産を選択せず解決する方法があるということを知ってください
(法的抜道や裏技があるわけでは無い。どちらを選択するかは経営者が決める)
4.税金の滞納は事前に極力解消しておく必要がある
第二次納税義務といって、形式的には第三者名義の財産になっていても実質的にみてその納税者の財産と認められれば、その第三者に納税義務を負わせるという制度があります。
二つの条件を満たし、別会社としての要件を満たせれば、新会社はこの第二次納税義務を負う可能性は低くなります。それでも税務署が旧会社やその取引先に調査を行う場合があります。(結構あります)
この調査が取引先からの風評被害にもつながり、最悪取引自体がなくなってしまうリスクもあります。
このようなリスクを避けるためにも税金の滞納は極力解消しておいた方がいいです。
(そもそも、税金、社会保険の滞納が原因で資金繰りに行き詰まる事が多いです。その場合でも再生の可能性はあります。)
5.黒字の事業を移す必要があり、経営改善にも取組む必要がある
第二会社は、「事業自体は黒字であるが、到底返しきれない借金がある」場合に有効です。
黒字の優良事業と赤字の不採算事業の両方があれば、優良事業のみ新会社に移せば良いです。
一つの事業しかなくその事業自体が赤字続きであれば、借金をゼロにしたとしても当然ながら再度破綻します。
第二会社方式は裏技でもなんでもなく、経営改善を行う必要があることには変わりありません。
このような方法を知らなかった方も多いのではないでしょうか。
第二会社は「自分が犠牲になり、取引先・従業員を守る」という覚悟が必要です。
実際に第二会社方式による事業再生を行う際には、事業再生に詳しい公認会計士や弁護士のアドバイスを受けながら、慎重に進めることをおすすめいたします。
