サービサーに債権が移るメリットは、債権譲渡価格(銀行からの買取価格) 以上の金額を返済し、残額を債務免除してもらう交渉が可能になる点にあります。
残債務の一部返済を条件として、サービサーから債務免除を受けることをDPO (Discount Pay Off)といいます。
DPOでポイントとなるのは、 債権譲渡価格とサービサーとの交渉です。
・債権譲渡価格
サービサーへの譲渡価格は、主に次の要素から決定されます。
①債務者の返済能力
決算書から見た利益や資金繰り状況、返済実績により返済能力を判断します
②担保の処分価格
担保評価額(任意売却または競売で回収可能な価格)
③保証人からの回収予定額
連帯保証人の所有する資産、収入の状況から見た回収予定額
サービサーへの譲渡価格は、総合的判断により決まりますが、返済力はないが担保だけが残っているという場合は、競売になることを踏まえ、 担保評価額の7割程度の価格になっている可能性があります。
決算書が大幅な赤字状態で、長期にわたって延滞しており、担保も保証人もないという企業の債権は、「無償同然」の価格がつけられます。
銀行は、このような債権を少しでも早く償却したいと考えます。 極端にいえば譲渡価格1円ということもあり得ます。
一方で、サービサーに対する債権譲渡では、銀行が複数の債務者に対する債権をひとまとめにして入札形式で売りに出すバルクセールも用いられ、その場合には、予想以上に高い値段がついていることもあります。
・サービサーとの交渉
①事業を継続する場合
事業を継続する場合は、事業収益からの返済が原則になります。
しかし、事業の収益性から返済が難しい場合、残債免除を条件に、ある程度の金額を一括で支払うのであれば、サービサーとしてはそのほうがメリットがあると考え、残債免除に応じてくれる場合があります。
その場合、一部返済の原資をどう確保するかが問題となります。一部返済の原資の調達については、別の銀行やスポンサーから借換え融資や増資を受けて確保します。
②事業を継続しない場合
事業を継続しない場合は、保証人からの返済が焦点となります。いくら支払えば残債を免除してくれるかは、保証人の経済的状況によります。
もっとも、サービサーは利益を得る目的で銀行から債権を買っているので、最低サービサーが銀行から買った代金以上の返済を受けないと残債を免除はしてくれません。
また、保証人が、他に資産がある状態で債務免除をすると、サービサ一が課税されるだけでなく、保証人自身にも贈与税が課税されます。
したがって、保証人に対し債務免除がされるのは、「保証人に他に資産がない状態」に限られます。
①② いずれにおいても、サービサーへの譲渡価格が安いほど、債務免除交渉がやりやすいということになります。
会社が債権譲渡価格を正確に見積もることは難しいので、話合いの中で、一部返済と債務免除をお願いするのが基本です。
