事業譲渡契約の契約条項

M&A

1 譲渡する事業

(1) 対象の特定

契約書には、何を事業譲渡の対象とするのかを特定する事項を記載しなければいけません。「○○に関する事業の全部」という記載がなされることがありますが、後の紛争を回避するためには、対象を具体的に記載した方がいいです。
個別具体的に列挙することが難しい場合は、「○○事業に係る資産、負債、及びこれらに付随する一切の権利義務」という包括的な記載をした上で、譲渡の対象から除外するものを記載するという方法もあります。

1つの事業のうち、プラスになる財産のみを譲渡して、マイナス部分(債務)は譲渡会社に残しておく、ということも可能です。

しかし、事業の譲受会社が「債務は承継していない」と常に主張できるわけではありません。

法律上、債権者が債務も承継されたと誤信するに足る事情がある場合には、たとえ契約で債務を承継していなかったとしても、譲受会社がその債務を負担しなければならないことがあります(会社法22条1項)。

ある事業を分けて譲渡する場合には、債権者など第三者との関係でも紛争が生じないように注意する必要があります。

(2) 財産権の移転時期・付随手続について

譲渡された財産は、以後譲受会社のものになります。物の所有権や債権・債務が移転する時期は重要な事項になります。
したがって、権利の移転時期、事業譲渡契約の効力発生日をいつにするのかを、契約書に明記します。この効力発生日を定めるにあたっては、下記会社法手続の進捗状況に注意する必要があります。

法律上、確定的に財産の承継がなされたと言えるためには、「対抗要件」を具備する必要があります。
不動産であれば登記(民法177条)、動産であれば引渡し(民法178条)、債権債務であれば債務者に対する通知または債務者の承諾です(民法467条1項2項)。

法律上確定的に譲受会社のものになったとしても、目的物を現実に譲り受けて(「引渡し」)、利用できなければ意味がありません。
法律上、事実上、譲受会社が事業を譲り受けたと言えるための手続を、いつ誰の負担で行うのかも、契約書に記載しておきます。

紛争を回避するのであれば、事業譲渡の効力発生日と同一または間近い日に、上記手続を実施することが望ましいです。

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アーク司法書士法人 代表社員 李永鍋

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