M&Aと詐害行為
債務者が債権者を害することを知って、自己の財産を減少させる法律行為。
債権者はこれを一定の場合に取り消すことができると民法424条「詐害行為取消権」には記されてます。
詐害行為かどうかは、債務者の行為態様や認識等との相関判断で決せられます。
東京高判平成22年に新設分割方式による会社分割が詐害行為にあたる場合があるとされた例があります。
債務超過の企業のM&Aは詐害行為とみなされるリスクがある
「事業譲渡」という方式で債務超過企業のM&Aを行う場合、買い手側は債務を引き継がずに資産のみ引き継ぐことが可能です。
売り手側の債権者からすると、M&Aにより資産のみ相手企業に移転するため、弁済を受けたくても受けられなくなる可能性が残ってしまいます。
(対価の現金は使われてなくなるため)
債権者が弁済を受けられない状況であると判断された場合は、詐害行為取消権を行使することができ、M&Aの効力自体が無効となるといったことも起こります。
買い手側が買収代金を追加で支払うように要求されるといったこともあります。
債務超過の会社や事業を売却する際の3つの注意点
売り手側が債務超過の会社や事業を売却する際の注意点を3つ紹介します。
1 詐害行為リスクを伝える
債務超過の会社の事業譲渡によるM&Aでは、買い手側にリスクがあることは前述した通りです。
債務超過の会社の事業だけを譲渡する側は、買主側にそうしたリスク負担をかけないために、あらかじめ自社の現状や抱えるリスク(詐害行為とみなされるリスク)をありのまま伝えることが重要です。
不安が残るのであれば、専門家に相談するのも有効です。
2 表明保証違反
債務超過の会社は、詐害行為リスクの他にも、表明保証違反を問われる可能性があります。
これは事業譲渡以外でも生じうることであるため注意が必要です。
M&Aによる最終譲渡契書の中に表明保証をしますが。
しかし、売却利益が少なくなる、M&Aの交渉が破談になる等の理由で、債務超過や簿外債務の事実を隠す売り手も一定数存在します。
表明保証を明記しているにもかかわらず、こういった行為に及んでいたことが発覚してしまった場合、契約違反となり、M&A交渉の破談や損害賠償請求になりかねないので注意が必要です。
3 シナジー効果
リスクだけ見ると債務超過の会社は事業譲渡できないと思うかもしれません。
しかし、自社とのシナジー効果を見込める買い手に適切にアプローチできれば、事業譲渡は十分可能です。
シナジー効果を適切に見込むためには、まず自社の事業を客観視することが必要です。
専門家と協力して、売り手と買い手および債権者等関わる全ての人がメリットを感じられる最適解を考えていく必要があると言えます。(三方良しは商売の基本)
